『夕空の さだまるものか。
ひたぶるに
霄(は)れゆく峰に、
むかひ 居にけり 』
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座敷の障子を開け、正座して、武士が雨上がり夕空をじっと見ている。
傍らに太刀を置き、正座の姿は微動だにしない。
その凛とした姿。
なにかを覚悟しての夕空の凝視だろう。
あした切腹するのかも知れない。
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与謝蕪村に以下の句がある。
ただ、あした夫婦共お手打ちなるのだ。
しかし今日は衣替えの日。
夫婦は今日平然として衣替えをする。
毎年行っているように。
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私はこういう人たちの心構えに憧れる。
非日常を目前としながら日常の中の平常心。
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雨あがり空はやがて夕焼けへと赤く染まっていく。
開け放った障子の外の樹々も静かだ。
武士はやはり正座を崩さず凛として「霄(は)れゆく峰」をみつめている。