2014年8月5日火曜日

3.夕空の さだまるものか・・・


『夕空の さだまるものか。

   ひたぶるに

 霄()れゆく峰に、

むかひ 居にけり  』

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座敷の障子を開け、正座して、武士が雨上がり夕空をじっと見ている。

傍らに太刀を置き、正座の姿は微動だにしない。

その凛とした姿。

なにかを覚悟しての夕空の凝視だろう。

あした切腹するのかも知れない。

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与謝蕪村に以下の句がある。

 『お手打ちの 夫婦(めをと)なりしを 衣替(ころもがへ)

 この夫婦の仔細な事情はここでは問わない。

ただ、あした夫婦共お手打ちなるのだ。

しかし今日は衣替えの日。

夫婦は今日平然として衣替えをする。

毎年行っているように。

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私はこういう人たちの心構えに憧れる。

非日常を目前としながら日常の中の平常心。

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雨あがり空はやがて夕焼けへと赤く染まっていく。

開け放った障子の外の樹々も静かだ。

武士はやはり正座を崩さず凛として「霄()れゆく峰」をみつめている。